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デグーの歯の健康とケージ齧り対策

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デグーの歯の健康とケージ齧り対策

デグー飼い主さんの多くが一番困っている事、それはケージを齧る行為ではないでしょうか。我が家でもその対策には頭を悩ませています。

そもそも何故デグーはケージを齧るのでしょう。今回は「デグーの歯の健康となぜケージ齧りが危険なのか?」をお話ししたいと思います。(執筆者:上田絵美

 

デグーは「齧歯類」です

齧歯類

デグーは「齧歯(げっし)類」という仲間に分類されています。つまり「齧る(かじる)ための歯を持った動物」の仲間です。デグーの他に、齧歯類にはどんな仲間がいるのでしょうか。

ハツカネズミ、プレーリードック、リス、ビーバー、カピバラ、モルモット…すべて前歯が特徴的な動物ばかりですね。これらの仲間の前歯(切歯)は上下1対で4本生えており、常生歯(一生歯性)と呼ばれ、一生伸び続けます。

つまり、常に歯を削り続けなければならない動物ということになります。もう少し深く見てみると、デグーは齧歯類の中でも「ヤマアラシ亜目」という種類に属します。ここで、もう一度おさらいです。デグーはデグーマウスとも呼ばれることがありますが、「ネズミ」ではありません。

たしかに大きく分けると「ネズミ目(齧歯目)」ですが、デグーはカピバラやモルモット、チンチラなどの仲間です。カピバラやチンチラのことを「ねずみ」と呼んだりはしないですよね。だからもう、デグーのことを「ねずみ」と呼ばないでくださいね。

デグーの歯の特徴

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話を元に戻します。さきほど、前歯は削り続けなければならないと言いました。
しかし、やっかいなことに、「ヤマアラシ亜目」の歯は前歯だけでなく、奥歯(臼歯)も伸びる動物なのです。これが「ネズミ亜目」に属するネズミやハムスターとは違う点です。3~4日ほどで約1ミリ伸びるので驚きです。

そのため、デグーは常に何かを齧っていなければならない(歯を削らなければならない)ということがわかります。齧歯類の前歯は先端部分を「ノミ」のように使い、堅い物を齧ったり、噛み切ったりしています。たまに口をモゴモゴさせていますが、伸びた歯の先端部分を擦り合わせて削っていると言われています。

ここでふと疑問がわきます。単純に歯を削ればよいなら、てっとり早く「堅い物」を常に齧らせればよいのではないでしょうか。たとえば、ケージのワイヤー部分は堅くてデグーの歯を削るには持ってこいの物でしょう。
しかし、デグーの歯にはケージのワイヤーを齧ってはいけない理由があります。

ケージを齧る危険性について

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デグーの歯は、皆さんが想像しているよりもずっと柔らかいのです。爪切りで切れるほどの硬さなので、そんな硬さの歯でケージのワイヤーを噛み続けたらどうなるでしょう。

皆さんのご想像どおり、歯が曲がったり、欠けたり、折れたりしてしまいます。そんな状態がずっと続けば、歯だけではなく歯根部分に障害が起き、不正咬合の原因になってしまいます。

不正咬合とは?
歯の異常により噛みあわせが悪くなり、水が飲めなくなったり、エサが食べられなくなるなど、健康を損なう恐れがある病気です。
※注:ワイヤーを齧る行為が不正咬合になるすべての原因ではありません。遺伝や個体差もあります。

私たち飼い主は、ケージのような堅い物を齧らせず、かつ、前歯も奥歯も削れるようにしてあげなければならないのです。かじり木などの齧るおもちゃは、ストレスの解消にはなりますが、前歯だけが擦り減るだけです。

それでは、どうすれば効果的に前歯も奥歯も削れるのでしょうか?答えはチモシーなどの牧草を与えることです。

牧草類を与える重要性について

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デグーは牧草を食べる時に、何度も何度も咀嚼していますよね。
(そしゃく:食物が細かくなるまでよく噛むこと)

これが一番大事なことなんです。奥歯を使って牧草を擦る(咀嚼する)ことが、奥歯も削ることになるからです。それではどんな牧草を与えればよいのでしょうか。牧草にもたくさんの種類があります。

硬さの違うもの:1番刈り(硬い)→2番刈り→3番刈り(柔らかい)
細さが違うもの&種類が違うもの:アルファルファ(マメ科)など

1番刈りが硬くて良さそうですが、ここで大切なことは硬さではなく「継続してたくさん食べて(咀嚼して)くれること」です。
そして、飼っているデグーの好みを知ることも大切です。

チモシー

どれが好きか分からないという場合は、ネット上で牧草おためしパックも売っているので、買ってみるのもよいでしょう。また、食いつきが悪い子にはチモシーゴールドがオススメです。ちなみに我が家の子達は、1番刈りより2番刈りの柔らかい物が好きなようです。

おすすめのチモシーゴールド

チモシーゴールド2番刈り
栄養成分:粗タンパク質 13.0% 粗繊維質 30.0% 粗脂質 1.5% 水分 12.0%
もりもり食べてくれる子が多く、「こんなに食いついたのはじめて!」という声もあるくらい美味しそうなチモシーです。


余談ですが、ウサギ(齧歯類ではなく重歯類)も常生歯を持っていて、前歯と奥歯が伸び続けます。我が家のウサギも「奥歯の伸びすぎで食事が取れない」という弊害が出るため、病院で定期的(約1ヶ月に1回)に奥歯を切る処置を受けています。

ケージ齧りは一切しない子ですが、歯が伸びる大きな原因はペレットにあると考えられます。牧草が苦手な彼は、すりつぶして固めてあるペレットを好んで食べるため、奥歯で擦り砕くのではなく、噛み砕く食べ方をしているのではないかと推測します。

昔は良く牧草を食べていましたが、歯が悪くなってからはとくに嫌うようになってしまいました。奥歯の痛みの記憶が残ってしまっているからだと思います。デグーにも同じことが言えます。こうならない為にも、牧草の咀嚼は大切だと実感しています。

デグーは何故ケージを齧るのか?

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デグーの歯の健康を守るためには、牧草の咀嚼が大切なことがわかりました。
それでは、更に健康な歯を損なう危険性のある「ケージ齧り」について考えてみたいと思います。まず、何故デグーがケージを齧るのか、いくつか考えてみました。

ケージを齧る原因は?

  • 1飼い主に対してのアピール
  • 2歯がむず痒い
  • 3音が鳴る(ワイヤーが揺れる)のがおもしろい

我が家では1番が多いです。デグーが飼い主にアピールするのは、やはり構って欲しいからでしょう。オヤツが欲しかったり、撫でてもらいたかったり、部屋んぽがしたかったり。理由はさまざまだと思います。そんなデグーの欲求を満たしてあげられれば、ケージ齧りも収まる可能性もあります。

しかし、我が家では四六時中彼らの欲求を聞いてあげられません。そこで、夕飯後から触れ合いタイムをとるようにしました。それを始めてからは、日中に私が部屋にいてもケージ齧りをほとんどしません。

そのかわり、夕飯時になると一斉に騒ぎ出します。それは就寝時まで続きますが、電気を消すと諦めて静かになります。こんなふうに、何か決まり事をするのも効果的な方法です。2番の歯がむず痒い子には、かじり木やくるみのような硬い殻を齧ることで解消されるようです。

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3番のおもちゃ感覚の子には、まず何を楽しんでいるのかを観察して見てみてください。音なのか、揺れなのか。音が気になる子には、鈴のようなものをぶら下げて気を引くと、ケージを齧るのを忘れて鳴らして遊ぶようになります。

揺れるのがおもしろい子には、ひとまず扉の遊び部分を無くすのが先決です。揺れないように、クリップや洗濯バサミ(プラスチックではなく鉄製の物)のようなもので固定してみてください。揺れなくなると一気に興味が失せるので、齧るのをやめてしまいます。

こんなふうにケージ齧りが落ち着いた子もいますが、皆さんのデグーがどんな理由で齧っているのか、まずは観察することから始めてください。

デグーのケージ齧り対策

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この問題の解決とケージの存在は切り離せません。さまざまな経験から、齧歯類(齧る動物)の飼育にワイヤー製のケージは不向きだということがわかりました。考え方はさまざまですが、理想は水槽型です。少なくともケージを齧ることで起きる病気を防げます。

しかし、このことに気が付くには遅すぎました。我が家のケージはすべてワイヤー製です。今からすべてを替えるのは金銭的にも厳しく、ワイヤーケージで出来る対策を考えていくしかありません。そこでさまざまな方法を試してきました。

(1)かじり木の設置

マルカン かじり木コーン
材質:本体/ポプラの木、ネジ・ワッシャ/スチール
サイズ:φ45×H130


小動物用かじり木 ガリガリキャロット
材質 本体:天然木 葉:ヘチマ
サイズ:径 約50×長110mm


この二つはワイヤーケージに設置できるネジ式になっています。普段良くケージを齧る場所に設置するとよいでしょう。ちょっと立ち上がって齧れる高さに設置した方が良く齧ってくれます。

小動物用かじり木

Sサイズだと1日で壊してしまう子がいるので、買う際は大きいサイズを選ぶようにしましょう。中にネジが入っているので、飛び出してくる前に新しいのと交換するようにしてください。

(2)かじり木フェンスの設置

SANKOかじり木フェンス
原材料:天然木
サイズ (幅X奥行X高さ) :20×4×23cm


KAWAI C・A・T がじがじフェンス
原材料:アカシア
サイズ:縦160×横150(内外)


川井ハングトイチモシーボード
原材料:チモシー
サイズ:縦270×横195


扉を齧る子にはフェンスの取り付けが有効です。我が家はKAWAI C・A・T がじがじフェンスを愛用していますが、Sサイズがちょうど扉のサイズで使いやすいと思います。

フェンスを止めているネジを最初に破壊されると、フェンス自体の役目が無くなります。ネジを少しだけ高めに設置した方が長持ちします。値段が少々高いのは難点です。

(3)齧り防止スプレーの使用

ビターアップル小動物用
サイズ:5.0×5.0×19.5cm(幅X奥行X高さ)
噛まれたくないものに直接スプレーしてお使い下さい。


良く齧る場所に吹きかけて使います。商品説明には「りんごの皮の苦み成分により、小動物が齧るのを嫌がり、齧り癖を矯正します」と書かれています。この商品については口コミが分かれていて購入を悩みましたが、使ってみた結果、残念ながら我が家では効果がありませんでした。

嫌がったのは、はじめの数回だけで、あとは何度吹きかけようがお構いなし。要するに、齧る興味を無くすまでの苦みでは無かった、ということでした。
ただ、使って効果があったという方もいるので、興味のある方は一度試されるのもよいかと思います。

(4)齧るおもちゃ

川井かじリングバー(ももバー)
かじりバーにはいろいろ味が出ているので、好みの味を見つけてあげるとよいでしょう。木を食べるというよりは、皮を齧って食べます。


小動物のおいしいおやつ(殻付きくるみ)
硬い殻を齧ることに興味を移すことが、手ハゲの齧り癖にも効果があると言われています。両手に抱えて必死で齧る姿はとても可愛いですよ。
※中のくるみはカロリーが高いので、与えすぎに注意してください


割れ松ぼっくり小動物のおもちゃ
自然素材の松ぼっくりをかじって遊ぶことで、歯の伸びすぎ予防やデンタルケアにも効果的です。落ちている松ぼっくりを与える場合は、虫などが付いている場合がありますから、十分に気を付けてください。


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(5)その他:別の事に興味を移してケージ齧りを止めさせる方法

小鳥用のおもちゃ

小鳥用のおもちゃ(三晃商会SANKOバード・トイハンガー)をぶら下げて、かじったり、揺らしてベルを鳴らしたりするとケージ齧りが半減しました。


扉の前に木のおもちゃをぶら下げる

ワイヤーに小さく切った木材を通すだけですが、いつもケージをかじる場所に設置するので、これが邪魔になるようです。取り除くために必死に齧ります。


ガチャ玉をぶら下げる

揺れるのが楽しいのか、パンチをして遊びます。遊ぶことで一時的にケージ齧りを忘れるようです。


ケージを拡張する

行動範囲を広げて、より広く遊べるようにするとケージのガリガリが減るようです。(参考:デグーのストレス対策!ストレスフリーを目指すための環境作り)

このように、我が家もあの手この手でケージ齧り対策をやってきました。その結果、どうなったでしょうか。減りはしましたが、完全に無くすことはできませんでした。

このことからわかるように、完全にケージ齧りをやめさせることはできないのです。ケージ齧りを止めさせるためには、ケージを水槽型に変えるしかありません。水槽タイプのケージ(アクリルルーム)については、「デグーをお迎えする前に知っておきたい!デグー飼育のために用意すべき物」の記事で詳細を載せています。

デグーのケージ齧りを止めさせるには?

ボードなどでワイヤーケージを覆って物理的に齧り癖を抑え込んでも、急に齧れなくなったことで、ストレスに弱いデグーが心の病気にならないとも言えません。大事なのは抑え込むのではなく、齧らないように仕向けることなんです。

私たち飼い主は、このイタチゴッコにとことん付き合う覚悟をしなければなりません。どうすれば、齧らないように仕向けられるか、これは飼い主の永遠のテーマです。

最後に

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最近では齧歯類の歯のメカニズムを解析して、人間の歯の治療に活かそうという研究がなされているそうです。人間の歯は一度折れたり虫歯になって失ってしまうと、インプラントや入れ歯のお世話にならざるをえません。

研究が進み、齧歯類の歯が伸び続ける細胞が解明されれば、その細胞が人間の歯の再生治療に貢献する日がくるかもしれないのです。飼い主とデグーが、歯についての果てしない攻防戦を続けている裏側で、なんと素晴らしい研究なのでしょう。この研究が人間にもデグーにも活かされることを期待したいです。